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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

長谷部大尉は、また元の梯子をのぼっていった。

昨夜は川上機関大尉のもちこんだ日本酒でひどくいい気持になり、いいたいことをいって寝てしまったが、今朝になると、なんだか昨夜のうちに落し物をしたような気がしてならない。

(はて、何かな?)

と思って考えてみて、やっとのことで思い当った。

(そうだ、川上のやつ、なんだかいやに影が薄かったぞ)

そこで友の身の上を思って、機関部までたずねてきたわけだが、いまも聞けば、彼は旗艦へ行って、司令官のところにいるという。朝から何の用事だか知らないが、元気にやっていればなによりのことだった。

大尉の足は、いつしか甲板へ出ていた。

きょうも熱帯の海は、穏やかに凪いでいる。見渡せば、果しのない碧緑の海であった。そして海ばかりであった。ただ前方二百メートルを距てた向こうに、旗艦須磨が黒煙をはきながら白い水泡をたててゆく。

ぽぽーと、汽艇の響が、右舷の下でする。

舷梯下に、汽艇がついたらしい。

大尉が見ていると、舷門についていた番兵が、さっと捧銃の敬礼をした。誰か下から上ってきたようである。

はたして長身の士官が上ってきた。川上機関大尉であった。