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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
七
「睡眠薬による自殺だ」
七
城介の属する部隊が香港から大同に戻って来たのは、昭和十七年六月末のことである。城介と同期の衛生兵は、ほとんど軍曹になっていた。加納軍曹もその一人だ。大同からまた厚和に移動した。
厚和での勤務は、全然でたらめで、頽廃していた。香港での重任を果たして一応元の巣に戻った安心感があったし、北方なので急激な作戦行動もなかった。それに彼等はもうすぐ解除になる。帰還要員という特別扱いを受けていた。
もちろん厚和の部隊全部が、でたらめだったわけではない。帰還要員たちだけである。
「帰れるというのに、働く気になれるかい。ばかばかしいや」
そういう気持で、城介たちはほとんど働かず、昼間の勤務はサボり、夜は酒ばかり飲んでいた。
部隊長は中田という軍医大尉だったが、少し陰険な性格の男で、
「帰還要員といえども、たるんではいかん」
と、しばしば訓示したが、彼等には通じなかった。古参軍曹ぐらいになると、軍隊では神様みたいなもので、そうかんたんに訓示ぐらいで動くものでない。
「いやな野郎だな。あいつ」
「手前の進級のことばかり考えてやがる。軍人の面汚しだ」
中田部隊長は皆から嫌われていた。