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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

六

へんなもんだね」

「じゃれ合ったというわけか」

栄介はふんと鼻でわらって、返事をしなかった。

「しかし汽車が動き出した時、これが見おさめかと思うなんて、少しオーバーだね。感傷なんだな。現実には東京で再会しているんだから」

「いや。今でもおれは人と別れる時、これが見おさめかと感じることが、時々ある。時々以上にある。その直感はたいてい当らないけれどね。あの下関で城介を見送った時の感じが、心のどこかで尾を引いてるのかも知れない」

六

昭和十三年十二月の下関市は、栄介の記憶によると、非常に暗い街であった。もちろん気分や情緒的に暗いのではなく、実際に光がすくなかったのだ。

「あの日は燈火管制でもやっていたのかな」

彼は時々そう疑うが、昭和十三年頃に燈火管制をするわけがないし、また店や飲み屋も開いていたので、管制でも演習でもなかった筈である。十二月は一番日が短い時節で、彼等二人は午後六時頃、下関に着いた。東京の明るさに慣れていたので、実際以上に暗く感じられたのだろう。

栄介は空のスーツケースを提げていた。

城介に召集令状が来た。電報が来たというので、栄介は言った。

「おれもいっしょに帰るよ。