轻松读懂日语经典作品
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
栄介は喘息という病気は知らない。知ってはいるが、かかったことはない。たしかあれは遺伝性のものだと教えられた記憶がある。しかし父親や母親もその傾向はなかったし、兄の竜介は知らないが、現在生きている彼や弟や妹にもその徴候はないようである。温度や乾燥度でそんな病気が出るものなのか。
「そんな寒い土地なのかね」
栄介は言った。
「下関に送りに行ったのも、寒い日だった。城介は造酒屋の二階に泊ったよ。あんたもいっしょだったかね?」
「いや。自分は別だった。お寺に泊ったよ」
加納はひらひらとひねハゼを釣上げ、慣れた手付きで釣針から外した。
「あれも寒かったが、寒さのけたが違いましたね。わたしゃいきなりあんなとこに持って行かれるとは、予想もしてなかった。とにかくあの翌日、防寒被服を支給されて、行先は教えられずに船に乗せられた。さあ、今考えると、何トンぐらいの船だったかな。よく覚えてないね。玄海灘に出たということだけは、はっきり覚えています」
「なぜ?」
「誰かがそう言ったんで、その声が今でも耳にこびりついている。そう揺れなかったですな。船艙にぎっしり押し込められて、上甲板に出るのは禁じられていたけれど、そっと入口から見上げると、月夜でね。