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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

実際機関車もくたびれ果てて、ホッホッと煙を立てて、あえいでいるように見えましたよ」

上海から乗船。医療品などを積込む。城介たちはその監督に当った。上海見物などの暇はない。病院開設は急を要するのだ。

軍用船は単独で出発した。護衛はない。敵潜水艦もまだこの水域には、出没していなかった。

こうして船は台湾の高雄に、無事到着をした。厚和のような北辺と違って、亜熱帯の風物は華麗で、まるで燃え上っているように見えた。空気も適当に湿って、潮のにおいがする。港内の船々の間を、竹笠をかぶった舟子があやつるサンパンが、右往左往している。それが印象的であった。

「その高雄で一悶着が起きてね」

加納は笑いながら言った。

「れいの婦人会、愛国婦人会てえんですか、それが慰問品を持ってやって来たんです。何を持って来たかというと、ヨウカンとか黒糖などの甘味品だ」

南下中の列車や軍用船で、いろいろ南方の話題が出る。彼等の希望のひとつが、バナナや生のパイナップル、それらを腹いっぱい食べたいということである。彼等は豊潤な果実に餓えていた。

彼等はここで一応下船した。別の船に乗り換えるために、高雄で一泊することになった。