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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

御用商人的落着きが、身のこなしに具わって来ていた。

「御苦労だったな」

幸太郎は栄介に言った。あれ以来、そっけないと言おうか、あるいはよそよそしい態度を、栄介に対して幸太郎は保持し続けている。そして幸太郎は母親に視線を移した。

「おフデさん。遺骨を拝見してよろしいか」

「それは栄介に聞いて下さい」

母親は言った。幸太郎は何か抵抗を覚えるような態度で、栄介を見た。

「いいでしょう。見たけりゃね」

眼がかさかさに乾いて行くような感じで、栄介は答えた。

「お母さん。おれは眠るよ。汽車でほとんど眠っていないんだ」

彼は納戸に入り、ばたんばたんと乱暴に床をのべ、布団の中にもぐり込んだ。実際に疲労で眼だけではなく、皮膚も乾いていて、横になるとじんじんと血が廻るのが判った。やがて眠りが来た。

夕方、がやがやした人声や釘を打つ音で、栄介は眼覚めた。起き出して庭に出ると、幸太郎の店の若い者たちが、門のあたりに三、四人動いていた。門柱から門柱へ横木を渡し『英霊の家』と書いた板を、それに打ちつけている。それだけでなく、門から前庭に通じる入口に『故陸軍衛生曹長矢木城介之霊』と記した木柱が立てられていた。