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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
幸太郎の体は二十年前にくらべると、縮んでひとまわり小さくなったようである。服装のせいなのか、それとも齢をとって縮んだのか。しかしそれが幸太郎だと彼に確信させたのは、首のつけ根にあるコブであった。顔は皺が目立つのに、コブだけはいくらか縮小したとは言え、艶々と光ってふくらんでいる。矍鑠の感じがまだそこらに残っていた。
それにくらべて、二人の老人は幸太郎よりも服装はきちんとしているのに、ひどくよぼよぼとして生彩がなかった。大声を出しているのは幸太郎だけで、あとの二人の声は小さかったり、呂律が怪しかったりした。お前とかおれという呼称が会話に混るのは、やはり学校時代の同級生なのだろう。和服の女は二人のどれかにつきそって来たに違いない。一歩ほど下ってうつむいていた。
「〈舞踏会の手帳〉にしては、ちょっとうす汚ないな」
横眼で見ながら、栄介は会話に耳をすましていた。出て行って挨拶をする機会を延引させる気持もあったが、まだ自分が出て行く幕じゃないことも彼は感じていた。同級生だとすれば、同年輩だろう。やはり田舎の空気のいいところで暮していると、割に元気をうしなわず、都会であくせくしていると、がっくりと老け込んでしまうのか。