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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

いい加減なところで引上げ、栄介の背に貼りつける。同じ過程を経て、次のがその上にべたりと乗せられる。……

木綿布を隔てているので、それほど熱くもなく、もちろん冷たくもなく、むしろ頃合いの湯に入るような快感があった。

(思ったよりもかんたんなもんだな)

気楽に手足を伸ばしながら、栄介は考えていた。記憶の底を探っていた。

(この感じは、何かに似ているな。何かに)

重なった包帯を背中に密着させるために、医師の手がそれをのしたり、たたいたりした。背中でやわらかい堆積が、ぐにゃぐにゃと形を変えるのが判る。明り窓の障子を開いてガラス戸だけにしたので、青い空が見え、日射しがそこから入る。彼は卒然として思い当った。

「ああ。餅つきだ」

思わず声に出た。

「この感じ、餅に似ていますね」

「そうですな」

医師はポトンポトンと背をたたいて答えた。

「間もなく固くなる」

彼は日当りのいい前庭の、餅つきの風景を瞼に浮べていた。いつもあの頃の餅つき日は、小春日和であった。臼と杵が持ち出され、蒸籠からあたたかそうな湯気が立ち、それが臼の中に移される。調子のいい音を立てて杵がつき、相手がこねる。