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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

いろんなものがあって、しかも安くて――」

栄介は身じろぎをした。その背中の動かし方を、私は注意深く見ていた。

「でも、おれは城介をすっぽかす気はなかったんだぜ。彼の奉公先があんなところだろう。定期的な休暇はないんだ。手すきになると、ふらふらとおれんとこに遊びに来る。連絡がないから、こっちも待ってやしない。あいつがおれをだらしないというのは、別の理由からなんだ」

「うん。それは知っているよ。日記で読んだ」

栄介はいやな顔をした。私は城介の日記を預かっている。昭和十一、二年の頃のだ。布張りの小型なやつで、時にはペンで時には鉛筆で書いてある。その時私は城介に聞いた。

「何故僕に預けるんだね?」

「どうも女中が盗み読みしている気配があってね、これにゃ主人の悪口なども書いてあるんですよ。へんな告げ口されたら困る」

「栄介に預けたら?」

「栄介は今留守だった。映画を見に行ったらしい」

城介はあいまいな笑い方をした。

「それに兄貴の悪口も書いてあるんでね。ちょっと具合が悪いんだよ」

城介は私に対して、友人のような口をきいたり、時に年長者扱いをしたりした。どんな扱いをしていいのか、彼自身にもよく判らなかったのだろう。