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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

(このまま逃げようか。それとも戻ってたすけようか)

しかし反射的に、城介は現場にかけ戻った。逃げるのがこわかったのか。これが見捨てて置けるかという正義感だったのか。婆さんはうつぶせになり、地べたをかきむしってうなっている。城介が抱き起した時、その溝板の家のおかみさんが、不審そうな表情でぬっと顔を出した。城介は早口で言った。

「この婆さんが怪我をしたらしい。よろしく頼みます」

そして彼は婆さんをまた地面に戻し、学校の方に走った。結果としては、これが一番まずかったのである。わざわざ城介が戻らないでも、誰かが婆さんを見付けて、介抱しただろう。すると城介のやったことは、自分の顔をおかみさんに見せるために、かけ戻ったようなものであった。

あとで判ったことだが、婆さんの転んだ怪我は大したものでなかった。ただそのショックのために彼女は発熱して、十日間余り寝込んだ。

うどん屋のおやじは激怒して、学校当局にどなり込んだ。全校生徒の首実検をさせろという要求である。校長も弱ったらしい。首実検で新聞だねになってはたいへんだ。校長の進退にも関係して来るから、いろいろ協議の結果、