轻松读懂日语经典作品
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
彼は茶碗を置いて、痛そうに身じろぎをした。
「どうも背中というやつは、始末が悪い。自分でも見えないし、いわば盲点みたいなもんだからな。いつ敵が飛びかかって来るか判らない。人間が仲良くなる時、胸襟を開くとは言うけれど、背中を見せ合うということは、絶対にしないものだ」
私はその矢木の言説に、半分賛成したが、半分反対の気持があった。矢木は茶を飲み干すと、体をよじりながら枕からずり落ち、元の臥床の姿勢に戻った。苦しそうな、あるいは苦しさを誇張したような声で、
「骨が動くんだよ。人間関係みたいに、あちら立てればこちらが立たずという理屈は、骨には通用しない」
「僕もいつか背骨を打って、気を失った人を見たことがある。その現場をだよ」
私はあの日のことを思い出しながら言った。
「事故。事故だな、あれは、全く」
「自動車事故か?」
「うん。やはり自動車事故だろう。自動車が停留所標識をはねた。標識は折れて遠くに飛び、ある女の背中にぶつかった。自動車はそのまま逃げてしまったが、おそらく女に当ったことは知らなかったんだと思う。するとだね、女は確実に被害者だが、運転手の方は加害者と言えるかな。