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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

祝出征の宴を幸太郎宅でやりたいから、今夜来て呉れ、という用件だ。しかしその宴は、今夜うちでやることになっていた。

福次郎は会社に出ていたし、母親は台所でその支度をしている。

「兄貴。どうしようか」

城介は彼に相談した。

「あまり行きたくないな」

「じゃ断れよ」

城介は使者に言った。

「即日帰郷になったりしたら、面目がないから、壮行会はお断りします。うちでかんたんにやりますから――」

窮屈で酒がうまくなかったというのは、その夜の小宴のことだが、結構城介は飲み且つ食って、やはりうちはいいなあ、と好機嫌であった。身内だけの宴で、幸太郎はついに姿を現わさなかった。若干自尊心を傷つけられたのであろう。酒が一本、届けられただけである。

関東煮は汁がすこし甘過ぎた。

「お互いに酒だけは強くなったな」

彼は城介に言った。

「おれが初めて酒を飲んだのは、お前を東京に送りに行った駅前のうどん屋でだ」

「そうだったな。お銚子半分で、兄貴は真赤になっていた」

「そうだ。足がふらふらした。駅の向うは麦畑で、ゴッホが使うような黄色で、熟れてむんむんしていた」

「そうだったかな」

「プラットホームにきれいな花が咲いていた。