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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

壇の前には兵隊が整列し、遺族たちはその後に並ばされていた。椅子はない。立ったままである。彼は遺族の最後列に立っていた。整列するまでに時間がかかったし、またその儀式も長々と続いた。

「何だ。葬儀する者が葬儀されるなんて、へんなもんだな」

初めはそう考えていた栄介も、次第にじりじりと腹が立って来た。通知書を差出せば、引換えに遺骨を呉れると思っていたのに、こんなものものしい空虚な式につき合わねばならない。彼は心外であった。しかも夜汽車で来たので、昨夜はよく眠っていないのだ。

「長いですなあ。まだ終りませんかね」

隣に立っている鬚の生えた老人に、彼はそっと話しかけた。老人はじろりと彼を見たまま、返事をしなかった。老人の唇は寒さのために、紫色になっている。栄介も耳たぶに感覚がなくなり、洟がしきりに出た。もうこれ以上我慢が出来ないという心境になった時、やっと式が終った。

遺骨を受領したのは、それから一時間半後である。混んでいて、なかなか順序が廻って来なかったからだ。白布につつまれた箱を受取っても、彼に哀感は全然わかなかった。彼は不機嫌にそれを肩から前に吊した。