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ねこはち
猫八
岩野 泡鳴
「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页
動物役者という異名をさえ取っていたので、今さら虎の役を振られたとて、それが何の不思議であろう。けれども、ちょッと悲しく感じた。長年馴れてきていながら、職業だと思っていながら、どうせ茶化しているのだとは思いながら、自分の中なる人間がばかにされてるような気がして、ちょッと腹立たしくさえ思ったというようなシチュエイションにある主人公です」
「なかなか器用には作者の狙ったところは一貫しています」と、天神さまみたような顔つきの人が熱心な口調で口を出した。
「………」猫八には、今主人が言ったシチュエイションという英語が耳に残って、苦しいはめといったような意味の言葉ではないかしらんと想像された。そして自分は実際にお客様方の御贔負についはめられて、それに自分もついはまりこみ、とうとう二進も三進も動けない今の身分になってるのだとひそかに洒落れてみた。が、その心の奥ではますます芸人のいやなことを感じた。
「座長がそりゃア深井君のはまり役だと指摘するところがあります、ね」と、五分刈りあたまの前後へむッくり山脈のできた善智識顔の坊さんらしいのが言った。
「それから他のものにもその幕はすッかり深井君の虎に喰われてしまうというようなことを言われて」