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ねこはち
猫八
岩野 泡鳴
「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页
「………」書生の神経質は今度は微笑しながら、お辞儀をして、「それなら、わたくしにも分ります」
「………」わたくしにはちッとも何のことだか分りませんと猫八は言ってみたかった。げんじつ主義も自分には分らなければ、ぐたいとか空体とかも分らないので、ただかの落語家のこんにゃく問答を思いだしていた。
その間に、なお二三の小説が問題になってるようであったが、虎ほどには自分の興味を引かないので自分の坐ってる右手の壁にかかってる訳の分らぬ西洋画や、自分の前方の左り手にあるビール箱で組みたてた書棚の本の金文字やらに目をやりながら、出ようとするあくびを噛みしめた。もっとも、主人は「猫八には酒を出すがよかろう」と言ってくれたけれども、
「いいえ、やッぱり、かつぶしの方が」と答えて、主人の細君に餅菓子を供えてもらった。そしてかの女とともに野菜作りの楽しみやお互の子供教育のことを語り合ったために、子供に読めそうな雑誌を二三冊貰った。
そのうちに、高見さんから、
「じゃアひとつやってもらおうじゃアないか」と来た。
「………」さて、これからがいよいよおれの世界だと思うと、虎の小説に得た湿ッぽい気分などはどこへやら行ってしまって、自分の芸の評判を虎以上にしてもらいたかった。