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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
「宝石 第八巻第十一号」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,893 字 · 35 页
ナイト・キャップなれば、どんな場合にもぬがなくてすむ。質問されたら、頭に醜い傷があるからだと答えておけばよい。そして、その上から、古ぼけたハンチングをかぶることにした。
これだけの変装を十分間ですませるのには、相当の練習を要したが、今ではもう慣れっこになっていた。それを汚ならしい駅の手洗所などでやるというのは、日頃の贅沢でおしゃれな彼の趣味からは想像もできないことだったが、人間が入れ替わるのだから、宮城の趣味とはまったく逆の手段をとることが、かえってふさわしかった。彼は夢の国にはいるためなら、どんなことでもやる気だった。ひそかにアパートを借りておいて、そこで変装するなんて、ちょろっこい考えでは、ほんとうの人間入れ替わりなど、できるものではなかった。
宮城圭助を抹殺し、生れ替わった松永昌吉となって手洗所を出た彼は、駅の荷物預り所に行って、大鞄に鍵をかけて預けてから、今度は小型タクシーを探して乗りこんだ。それが彼の服装にふさわしかったからだ。
「南千住の駅の近く」
車の振動は一そうはげしかった。しかし、夢の国の入口に近づいているのだと思えば、なんでもなかった。