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まひるのおばけ

真昼のお化け

小川 未明

「お話の木」1937(昭和12)年8月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,904 字 · 16 页

青空文庫

「あの、おじいさんがきたのだ!」

彼は、すぐに家から飛び出しました。そして、子供の走っていった方角を見ましたが、なんらそれらしい人影もありません。あちらの煙突のいただきに、青空が出て、その下のぬれて光る道を人々が、いきいきとした顔つきをして往くのでした。

「おたまは、どこへきたんだろうな。」と、光一はしばらく往来に立っていました。そこへ、お湯から上がって、顔へ白粉を真っ白につけたかね子さんが、長いたもとの着物をひらひらさして、横道から、出てきました。

「光一さん、晩にチンドン屋の行列があってよ。」と、知らせました。

「どこに?」

「青物市場の前に、もうじきはじまるわ。」

かね子さんは、それを見にいくらしいのです。光一は、市場の方を見ると、チン、チン、ジャン、ジャン、という音がきこえてくるような気がしました。おたまのことは、忘れられないけれど、つい、自分もかね子さんといっしょにチンドン屋の行列を見る気になって、道のくぼみの水たまりを避けながら、二人は、町の方へ向かって歩いたのでした。

くる! くる! くる! いろんなようすをしたチンドン屋が……旗を立て、黒い山高帽をかぶってくるもの、兵隊帽子にゴム長をはいてくるもの、赤い頭巾をかぶって、行燈をしょってくるもの、燕尾服を着て、鉦と太鼓をたたいてくるもの……。