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ねぎさまみやた

禰宜様宮田

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页

青空文庫

俺らも、もう毎日真黒んなって働くなあ止めだ、人う面白くもねえ、

後あどうでもええようにすんがええや」

朝でもふて寝をしたり、食事の用意もしないまんま、どこへか喋りに行ってしまったりするので、心のうちではそんなに母親を怒らせた父親を怨みながら、まだやっと十一のさだが危うげに飯などを炊く。

暗い、年中ジクジクしている流し元に、鍋などを洗っている姉の傍に、むずかる六をこぼれそうにおぶったまきが、途方に暮れたように立ちながら、何か小声で託っているのを見ると、禰宜様宮田はほんとに辛いような心持に打たれた。

自分がいればいるほど、大混雑になる家から逃れるようにして、彼は出来るだけ野良にばかり出ていた。

けれども、別にそう大して働かなければならないほどの仕事もない。

耕地の端れの柏の古木の蔭に横たわりながら、彼は様々な思いに耽ったのである。

透き通りそうに澄みわたって、まるで精巧なギヤマン細工の天蓋のように一面キラキラと輝いている、広い広い空。

短かい陽炎がチロチロともえる香りのいい地面。

禰宜様宮田は、ジイッと瞳をせばめて、大きい果しない天地を想う。

そして、想えば想うほど、眺めれば眺めるほど、彼はあの碧い空の奥、この勢のいい地面の底に何か在りそうでたまらない心持になって来るのである。