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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
「ふ……ム」
義貞は内で体を拭いていた。壮者のゆたかな肉塊は、拭くそばからまたすぐ汗になってくる。
用意されていたことなので、主客はすぐ酒になっていたが、義貞はまだ、忠顕の来意がとんとわかっていない。客は忠顕だけで、連れていると聞いた女性は、この場には見えないのである。
「いや、おひきあわせはあとにいたそう。その前にちとすましておかねばならぬおはなしもありますから」
と、問わぬ先に忠顕のほうから言った。そのひとは、どこか別室にでもおいて、まず用談を先にとしているらしいのである。
「仰せください」義貞はさいそくした。「――ここは離亭です。呼ぶまではたれも来るなと、家臣どもも遠ざけてござりますれば」
「じつはの……」と、語気を凝らして「佐々木道誉の降参についてじゃが」
「ほ。そのことなら義貞も聞いていました。さきごろ大江山より道誉が使いを出して、あなたの御門へ、降参のおとりなしを、すがって来たとか」
「いやこの忠顕だけに来たわけではない。准后(廉子)のおん許へも懇願の使いを出して、るる、恭順のこころを陳べ、前非を悔いておる態なのだ」
「はははは。およしなさい、およしなさい」