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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页

青空文庫

破局

尊氏は、別れて、やがて花山院の廃宮から外へ出ていた。外の大気は明るく、武者陣の甲冑には、冬陽が虹色に陽炎していた。

破局

「なにっ?」

錦小路殿は言う。

昨今、ひとは直義のことを、そうよんでいる。

足利方で立てた光明院の朝廷は、さきごろ、押ノ小路室町の一劃を、里内裏とさだめられた。

つづいて、尊氏も、その居を、東寺から移して、三条坊門ノ御池におき、高ノ師直は一条今出川に住みついた。

――そして直義は、錦小路に邸を持つなど、すべてこの室町一帯を中心に新しいひとつの“足利聚落”が造成されかけていたのであった。

「師泰」

「はっ」

「後醍醐のお身まわりを、もっと、弛やかにせよとか、また給仕の公卿人をふやせの、朝夕の供御をよくせよなどとは、一体、誰が命じたか」

「もとより、一存などではございません。さきごろ、大御所お直々に、花山院の旧御所を、そっとお見舞いなされました折の、おいいつけにござりまする」

「なぜ、聞き流しておかないのだ。そちは兄者の命を重しとして、直義の命などはと、ないがしろにいたす気か」

「めッそうもない。じつはその折、わが眼の前ですぐいたせとの大御所の仰せつけに、やむをえず、公卿三名と、舎人雑色など七、八名を囲から解いて、お座所の内へ入れたような次第でして」