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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
山海相聞
さきに赤間ヶ関(現・下ノ関)から九州へ渡ったのは二月二十日。――そしていま、芦屋ノ浦からその舳を再度、赤間ヶ関へ回している今日は、四月七日。その間、たった四十六、七日でしかなかった。
「……思えば」
これは何の力だったのか。尊氏は自分に慢じ切れなかった。直義はたんに神明の御加護とそれをいっていた。が、彼にはそれとばかりもありがたがっていられない大きな責任感と、また現実の勝負とが、まだまだ前途には果てなく横たわっているのである。
「……つるぎの刃渡りは、そう何度も図に中る芸ではない」
彼は、海峡の船中で、大いに思い直すところがあったらしく、
「師直。船はこのまま府中(現・長府)までやれ。串崎をめぐッて、そこへじかに」
と、俄に、針路の変更をいいつけた。
師直は、意外として。
「では、赤間ヶ関へは」
「立ち寄るまい」
「ですが、御牒によって、長門の厚東ノ入道、周防の大内義弘、そのほか大島義政なんども、みな、人数をあげてお出迎えに出ておりますが」
「いや、それへは、早舟を一そう遣って、云々の由を、沙汰がえ申しておけばよい」
「は」
「赤間から府中までは、わずか東へ一里少々。