轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
「おいっ、外記、もいちど馬を曳いて来い」
羽川外記に口輪をとらせ、彼はまた二条兵舎の門を出て行った。すぐ高倉ノ亭へ行くつもりだったが、念のためと思い直したものらしい。
「頭ノ殿(忠顕)にはおいででございましょうか」
と、千種家の門で馬を降りた。
そして、忠顕との話がつきぬまま、加茂川べりの亭で、宵の頃まで、つい飲んでいた。
「……麗子」
呼ばれた気がする。
勾当ノ内侍は「はい」と胸でいってみたが、耳を澄ましたのみなのである。
麗子とは、彼女の元からの名であった。
義貞がいうには、いまは後宮にいる身でもないに、なお内侍とは妥当でない。これからは麗子と呼ぼう――と、三条高倉亭の奥では、そんなはなしも二人の間にできている。
この幾日、わずか十日にもまだみたないが――彼女は生きがいの中にいた。わがものと呼べる夫を得、自由を得、またほんとの男の熱愛にも燃やされて、花開く夜の体を初めて自分のうちにも知った。そのよろこびは、うつつない泉に始終せせらがれている姿のようで「――麗子」と義貞に朝夕よばれるさりげないことまでが、いちいち彼女の琴線には、こころよい語感になって、雌蕊の命をふるわすのだった。