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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页

青空文庫

なにとぞ、ご服喪は今日一日だけのこととして、おすましを願いまする」

と、進言した。

尊氏は、聞いて、

「それも一理」

と、うなずいた。

そこで、彼が持ってきた魚鳥をさかなに、杯を用意させ、

「諸将、兵士の端々にまで、こよいは酒をやって、喪は一日かぎりと、触れ直せ」

と、その夜は、精進落しの酒宴を開き、彼も大いに酔ったということである。

これなども多分に尊氏の政略だったにちがいない。武将尊氏であるよりは、彼はつねに政治家尊氏であった。またそこに、より彼らしい真価もみられる。

多々羅の一戦などでも、単騎奮迅の猛は、決して、彼のよくしたところではない。――が、大友具簡らの油断ならぬ老武族のこころをもよくつかんで、博多から太宰府に入ったあとでも、いかにそれらの“他郷の他人”で――そして勇豪な――九州人を心服せしめうるか。それに心をくだいていたあとがみえる。

たとえば、妙恵の追善にしても、その諷誦文(悼辞)は、自身が親しく筆をとっていた。その文は「歴代鎮西要略」にあるが、ここでは略す。

またおなじ「鎮西要略」には、尊氏がこれと同時に、九州の諸武士へ、勧賞していたこともみえる。