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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
一面。菊池の黒木城の方は、
三月十七日
寄手
ことごとくこれを破却
菊池一類は
本地へ向つて潰走のまま
お味方総勢
目下□追撃に移りをり
肥後半国以上も
はや風に靡いて御座候ふ
との報せだった。
これが出先の、仁木、畠山の二大将から、尊氏のもとへ、通達されていたころ。――彼はすでに、まったく、べつな軍務と指令に、あたまのかぎりをはたらかせていた。
なにかといえば。
九州津々浦々の船を、また、それに要する手馴れの水夫楫取たちを、博多の一ヵ所に集めさせることだった。――大挙して、ふたたび上洛の用意であるのはいうまでもない。
そのため、博多には、一色ノ禅門範氏をおいて、それらの運びを総攬させ、また託磨之親を、わき役として、師直から出す執事令をぬかりなく進めることに努めさせた。
船集めは、大事業である。
遠くは、薩摩、日向から。もちろん豊前、肥前の沿海からも徴集し、しかもそれは戦艦として使える堅牢な船質でもなければならない。
さらに、ともなう糧食やら馬匹、おびただしい数量の武器、征矢。じつに容易なしたくではない。
しかし、この規模と、またそれのよく行われてゆく実力とをみて、いまは九州の各地にひっそくしていた武士もみな出て来て、尊氏の軍門へくだった。