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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
「山の芋買うておくんなされ。お侍さん、山の芋はいらんかね」
と、馴れ馴れしく、そばへ来て、強いるのだった。要らぬというと、
「では、麦の粉はどうですえ。菓子にしたらええがの」
「いらんと申すに」
「お茶は」
「茶もある」
「でも、ことし摘んだよいお茶なのに、見ても貰わんでは」
「解くな。荷を解いても、買いはせぬぞ」
追い払っていたときである。ちょうど庫裡の縁を通りかけた尊氏がこれを見て。
「頼春。買ってやれ、何ぞ」
「お。これはいつのまに」
「愛くるしい娘だ。その芋の苞、持っているだけ求めてやるがよい」と、言った。
「運のよいやつだ。殿さまへようお礼を申せ」
頼春は、値をきいて、販ぎ女の手に銭をわたし、早々に追い立てたが、女はぬかずいたまま、縁の上の尊氏の姿へ、
「ありがとうございまする」
なんども、それをくり返し、またお願いいたしますると、やっと立って去りかけた。
その背へ、浴びせるように、
「これこれ。これに狎れて、またうるさく来てはならんぞ」
右馬介が言った。けれど女は返辞もしなかった。そのくせ遠くから縁の尊氏の姿を二度も振り向いて行った。
尊氏はあとで二人へ訊ねた。