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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
……詳しくは、追ッつけすぐ、赤松や細川が、御報告にまかるものとぞんじます」
直義は、首包みを抱いて、すこし前へ進み出た。
重たそうに、下へ置く。
戦陣匆忙のさいだ。首は武者の母衣で包まれ、血糊がにじみ出している。
それを解いて、直義は右手で首のもとどりをつかみ、左の手を母衣の下へさし入れた。そして、片膝立ての体をななめ構えに、首級をささげ、屹と、尊氏の熟視に供えた。
「…………」
尊氏は、見た。
息をつめている。そして、ひらいていた床几の膝も小さくすぼめ、両の手はただしく膝においていた。顔にはなんの感情の色ものぼっていない。無常感、それでもないようだ。ただマジマジと見入りながら、もう一言も交わすことのできない物質にたいして、何か、味気ない空しさでも抱いてるような彼に見える。
生前、しばしば会うことはあっても、親しい往来などは、ついぞなかった正成との仲だった。そのせいの無表情なのか。
それにしても、これほどな戦果を、これほどな名誉の首を、何と御覧あっているのか? 御満悦ではないのだろうか? 直義もそうだったが、ほかの面々も、みな、尊氏の口もとばかり見つめていた。