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あきのかご

秋の駕籠

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页

青空文庫

「だって初めにおめえが承知したんだぜ」

「冗談いっちゃいけねえ」

「おめえが承知したんだ」中次は云った、「お互いに二十日ちかくも遊んですっからかんだ、五両なら悪くはねえ、初めての長丁場だが、肩代りなしに二人でやろうってよ」

中次はもう手配を済ませていた。駕籠庄へいって切手を作って貰い、小遣も借りて来ていた。駄賃を先に呉れとも云えないので、途中の入用に二分借りたのであった。

「おらあ酔っていてなんにも知らねえ、そう云われてもまるっきり覚えがねえ」

「じゃあどうするんだ」中次は声を尖らせた、「明日の朝五時に弾正橋の袂でおち合うことになっている、旅切手も取り、親方から小遣も借りてあるんだ、けれどもおめえがいやだと云うんなら御破算にしてもいいぜ」

「怒るのは勘弁してくれ、いやだと云うんじゃねえんだ、おめえが承知ならそれでいいんだ、ただ話のうますぎるのが気になっただけなんだから」

「おらあ無理にゆこうたあ思わねえんだ」

「わかったよ」六助は閉口して云った、「あやまるから機嫌を直してくれ、そして明日はひとつ、気持よくでかけるとしよう」

中次は「うん」と云ったが、機嫌は直らないようであった。