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あきのかご

秋の駕籠

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页

青空文庫

三

したがって「魚金」のお梅がいくら中次に熱をあげても、中次のほうでは感じないのであった。お梅が自分に熱をあげているなどとは、爪の尖ほども気がつかないようであった。

三

「どうしたのよいったい、いつまで遊んでるつもりなの」お梅が云った、「もう半月にもなるじゃないの、いいかげんに仲直りをしたらいいでしょ」

「そうしたいんだ」と六助が云った、「おれはもう飽き飽きしちまった、なんにもすることがないんで退屈で退屈でしようがないんだ」

「だからさっさと仲直りをすればいいじゃないの」

「それがさ」六助は頭を振った、「おれはそうしたいんだが、あいつの顔を見ると舌が動かなくなっちまう、またあいつも退屈しきって、身をもて余しているくせに、おれの顔を見るとむっとそっぽを向いちまうんだ」

「両方で意地になってるんだわ、ばかばかしい」お梅は六助に酌をした、「いったい喧嘩のもとはなんなの、こんどはなにがもとで喧嘩になったの」

夜であった。外は雨が降っていた、午前から降りだした雨が、そのまま時雨のように陰気に降り続いていた。魚金の店も静かで、六助のほかにもう一人しか客はなかった。四十ばかりになるその客は、小座敷で飲んでいた。