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あきのかご

秋の駕籠

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页

青空文庫

異口同音であった。お梅がいたら笑うところだろうが、お互い同志ではくさるばかりである。二人とも顔をしかめて、無精ったらしく駕籠を担ぎあげた。むろん空駕籠であるが、担ぎあげたとたんに、ずんと肩に重みのかかるのが感じられた。

「おい、へんじゃねえか」

中次が云った。六助もへんだなと思ったところで、「うん」と云った。が、とたんにおっとばかり高い声をあげた。

「金だ、きょうでえ、あの客の金だぜ」

中次もあっと叫び、慌てて駕籠の中を調べた。すると敷物の下から例の四百五十両、ずっしりと重くふくれた胴巻が出て来た。二人はぎょっとして眼を見合った。

「追っかけよう」六助が云った。

「しかし」と中次が云った、「まさかぺてんのかかりあいになりゃあしめえな」

「なっても因果だ、いそげ」

二人は駕籠を担いで走りだした。正金で四百五十両、そのままずらかることもできた。江戸からこの大磯まで手弁当、帰りの銭にも困っているのに、「このまま逃げたら」という考えさえうかばない、寧ろ返すことにのぼせあがって、それこそいっさんに追っていったのである。

それから約半刻のち。二人は空駕籠を担いで、平塚の宿のほうへと歩いていた。