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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

そりゃ、それでいい。ただ、それを聞いていて、俺あ骨抜きになった。腐っちゃった。……てめえが、あんだけイヤがっていた戦争を――しかも、ただ引っぱり出されただけの戦争を、まるで俺が自分でおっぱじめたような気になった。責任は全部自分にあるような気になった。そいで、チャンとして生きて行く資格は自分にゃないように思った。……妄想だ。強迫観念だ。クソインテリの観念過剰だ。まったく、なってねえ! なんてえこった! ハハ、ハハハ!……そうなんだ。戦争を否定するために、てめえのイノチまで否定していたんだ俺あ。……俺があん時、ここでしたなあ、ありゃ戦争じゃない。俺あ、ただ、無我夢中で穴あ掘っただけだ。……敵を殺そうなんぞ思いもしなかった。出世しようと思ったんでもない。トクをしようと思ったんでもないんだ。……人のためになるかも知れん――そう、せいぜい、人のためになるかも知れんとバクゼンと考えながら……そんなら、自分のイノチは投げ出してもいいやと思って、血を吐き吐き、俺あ、やっただけだ。そいつは俺にとっては貴重だったんだ。そいつは、貴重だぞ、佐山富夫! そうじゃないか。