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たいない
胎内
三好 十郎
「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页
四
四隅の暗いところから、誰かがなにか話しかけた声を聞きでもしたように。……耳をすますようにしている。水のしたたる音。……再び二人の姿に目をおとして、歯をむいて薄笑いをうかべる)フフ……(低い、ほとんど聞えないほどの嘲笑。――そのうちに一歩前へ進み、その破れ果てドロだらけになった右足のクツを、花岡と村子の頭の上に、ユックリと持ちあげる。踏み殺すにも値しないものを踏み殺す人間の、ゴウマンな残忍さが表情と態度に現われている。……ガリッと二人の頭へ踏みおろしかける。フッとそれを宙でとめる。……足もとへ引いて、二人を見ている。……やがて、ソロソロとシャガンで、両手をひたいのところに持って来たかと思うと、低く、アーア、という。それから、チヨットだまっていてから、ウーッという)
花岡 ……(ビクンとして、首をあげて佐山を見て、それから、ユックリと上半身をもちあげる。夢からさめたように)……え?……なんだ?……どうしたんだ?……どうしたんだよ?
佐山 ウー……(たよりないアカゴが泣くように、ゆるく、単調に、泣いている)
四
穴の中の、入口に近い場所。
六尺四方ぐらいの坑道になっているが、ユカの一方が、岩くずや泥が掘り出したままに、うず高くなっているため、不規則な三角形の空間になっている。