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たいない
胎内
三好 十郎
「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页
七
同時に、スッと手元に寄った佐山が、右手のナイフを横にサッと振る。花岡が、ギャッと叫んで、懸命に佐山にかじりつく)
佐山 ちきしょうッ!
花岡 こ! このッ! き、き! (組み合ったまま、もう一つ発射されるピストルの音)
村子 (ひどい早口で)私たち、もう、助かって、外へまた、出られると、いうのに、そんな、ねえ! よしてよッ! よしてッ! あッ! (暗い隅の壁の下に同体に落ちた花岡と佐山が、上になり下になりして組み打つ。村子はそちらへ行こうとするが、やめて、這いずりながら中央のガンドウの方へ来て、ガンドウを動かして、二人の方へ光を向ける。その光の輪の中で、どちらが上とも下ともわからない二人が、今はもう衰えきったからだの、声も立てないで、闘っている。その互いになぐり合う鈍い音と唸り声)
七
中央の手前に置かれたガンドウの光の中に、三人が寄り合って坐っている。枯消しつくして、木像かミイラのように静謐である。
ウィスキイのビンが三人の中央に置いてあり、佐山が、ひしゃげたアルミのコップについだウィスキイを、口に持って行っている。
村子は、無表情な顔をあげて、それを眺めている。