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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

――そうなんだ。もう俺には、絶望はできない。

村子 ……とにかく、あたしは、こうしていると、なんにも考えられないの。……死ぬことがわかっているのに、人間、生きては行けない。

佐山 ……死ぬことがわかっているから、生きて行けるんだ。

村子 死ぬことが、もうすぐそこに来ているのに、生きた心持がどうしてするのよ。

佐山 ……同じことだよ。こうしてても、外にいても、――つまり、この内も、外も、同じだ。つまり、冒険だ。一歩ふみだせば、なにがあるか、なにがおきるか、わからない。身ぶるいが出る。……なつかしい……なつかしいなあ……つまり、それは、たった一回コッキリの、――つまり冒険だ。

村子 ですからさ……どうしているんだろう、今頃、おっ母さんや、妹や、そいから新橋の店の連中? ああ、ああ、ああ! 私がこんなところで、こんな目にあっているなんて、とても、だあれも考えてはいないわ。……ああ、なんとかして、なんとかして、ホントになんとかして……出られたら、私ホントに、もう一度、ホントに人間としてシミジミ考えた生活をして――ああ!

佐山 ……(ながいこと、だまっていてから)……そうさ。