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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

残りカスみたいになっちまって――ヘヘ。

花岡 だからさ、なおのことその細君としてみれば、この――ああ、なにか、すると、君あ……そうかねえ。インポテント――?

佐山 そうですねえ、まあ。……(淡々としていう)

村子 え? なに――?……(その意味をやっとつかんで、さすがにすこし赤くなる)まあ!

花岡 ヘヘヘ! そうかね! そいつは――そうかあ。……だけど、子供があるというんだから――?

佐山 精も根も、ここで掘らされてる間に、使い果たしてしまったんですねえ。……しかたがないんですよ。

花岡 しかしそりゃ、一時的な――なんだろう?

佐山 そう思っていたんですけどね、僕も。ダメですね、もう。

村子 そいで家を出て、ここへ来たの?

佐山 いやあ――家を出たのは半年前です。あちこちウロウロして――急にここに来たくなったもんですから。

村子 すると、しかし、こんなところで、食べるものも食べないで、いつまでも寝ていれば、死ぬほかにないんじゃない?

佐山 そうですねえ……

花岡 ヘ! (さきほどから、あおりつづけていたウィスキイの酔いが出て来るのと同時に、急に佐山の話が、がまんできなくなり、ほとんど憎悪に近い嫌悪で)死ぬんだなあ、そんな奴は! サッサと死んじまったほうがいいよ。