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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

花岡 なあに。

村子 ……とにかく、もう外へ出て、行きましょうよ。こんなところでグズグズしてんの、意味ない。

花岡 いいよ、まあ。ウィスキイ、もう一つ出してくれ。

村子 こんなところで、そんな飲んじまったって――

花岡 いいんだったら。まだ三本ある。(佐山に)生きて行こうとして、いろいろやってる人間だけが、生きて行きゃいいんだ。イノチを張って、火のようになって、こうしてお前――

村子 (カバンからウィスキイのビンを取りだしながら)いいじゃないの。行きずりの、なんでもない人じゃないの。ソッとして、したいようにさせときゃ、いいじゃないのよ。私たちがグズグズいうことないわ。

花岡 そりゃそうだ。……こいでなあ、妙なことを君に聞かれてしまったがな、こいで、また世間に戻って行けば、普通の人間だからね。今じゃこれが普通だ。(村子がカバンから出したビンを渡す。そのコップになったアルミのセンをねじ取り、コルクを歯でくわえてポンと開ける)……こうして、生きて行きたきゃ、大なり小なり、俺と似たようなことをしなきゃならん。うむ、そうだとも。そうじゃねえか、俺が昔、転向したんだっても――フ、フ、以前はこいでも紡績工場に働いていて、労働運動の、組合のと、カブレちゃってなあ、つまりアカだ当時の――だったことがあるんだ。