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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

――そいで、それから二三日たったら、温泉めぐりに連れてってやろう……いくら私がボンヤリだって――

男の声 ……なあに、俺あ――俺一人のことならタカが知れてるから、てめえの方から出頭してもいいくらいだ。うすみっともねえ、きれえだ俺あ、こんなこと。だけど、こんどは、こいつ、小田切の手足になって動いてやったなあ、おもに俺だなあ、俺がなにすると、ズルズルと芋づる式にケガニンが出る。そんで、まあ、……ま、いわば、義理だ。

女の声 ……いいわよ。

男の声 ……ゆんべ、おそくなってから、十号室に泊まりこんだ二人づれの男と、そいから、六号に前の日から泊ってて、部屋の外へちっとも出なかった背広の男なあ。

女の声 ちがう。あんたの気のせいよ、だって、私たちが立つ時だって、二人づれの方は、なんか笑いながら、これからお湯に入るところだったわ。あんなノンキそうに――

男の声 ゆだんをさせるんだ。

女の声 だって、そんなら、一本道だもの、振りかえればチラリとぐらい、姿が見えないはずない。

男の声 商売人だあ、そんなヘマあ、しねえよ。――やっこさんたちのやりくちを、知らねえんだ、君は。

女の声 だって、現にここにこうしていても、なんのこともないんだもの。