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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

あんまりすすめもできないけど――でも、こんなところにいつまでもいても、しかたがないんじゃない?……花岡というのは、悪党だけど、それほど話のわからない人じゃないわ。

佐山 はあ……(そのへんを見まわしている。奥でドシン、ドシンと音)

村子 ……(その方をチョット振り返ってみてから、歩いて来て、サツタバを拾いあげ、バタバタと泥をはたき落して、佐山の方に寄って、それを相手の手に持たせる)取っときなさいよ。

佐山 ……(そのサツは見ないで、近よせらた村子の、ヌメリと白い肌にギョッとして、顔中をしわくちゃにし、白い歯を見せて、低くヒイというような声を出す)

村子 なにさ?

佐山 ウッ!

村子 どうしたの?

佐山 いや、匂いが、その……

村子 匂う? あたし?……(相手のようすを見ているうちに、ニタッとして)……どうなすって?

佐山 ……(うつけたように村子の顔を見ている。奥でまたドシン、ガリッという音)

村子 その、あんた、奥さんのことでも思い出したんじゃない?

佐山 ……(ノドにゲプッと音をさせる。ドス黒く見えるアブクが唇の隅から、すこしたれてくる)

村子 あら、どうしたの?

佐山 いや……(手のひらで、そのアブクを横にふいて)あのう……温泉に行くんですね?