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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

菓子があったろう?

村子 ……もうないわ、チュウインガムがすこしまだ残っている――

花岡 ちぇっ、しょうがねえなあ。しかし、まあ、ないよりはマシだ。なにかのタシにはなる。……とにかく、こんだけだ。こんだけで――

村子 そいで――?

花岡 とにかく、すこし腹あこしらえて置くか。――ちきしょう! 懐中電燈の電池は切れるし、こう暗くっちゃ、どうにも――(つとめて自分を落ちつかせるためにブツクサつぶやき、ブルブルふるえながら手元をかきさがして、カバンからチーズの包みとビスケットの袋を出し、ポケット・ナイフでチーズを薄く切る)……こんな野郎に――(たおれている佐山に目をやって)たまったもんじゃねえんだ。(ビスケット二切れにチーズをはさんだものを二つこしらえている。動物が自分の食物を隣りの動物から守って歯をむいている姿。その手元をボンヤリ見つめている村子)……たまるかい! ちきしょう!

村子 ……どうすんの、そいで?

花岡 どうするも、こうするもお前――(ビスケットの一つを村子に差し出す)さあ。

村子 ……(受け取るが、別のことを考えている)私たちを追っかけて来た、その、十二番の客とさ――あんた、そういってた――あれ――?