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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

時々天井から落盤があると見えて、床の二三ヵ所がうず高くなっている。中央へんに小さな水たまり。四隅は暗い。壕は右手のところでカギの手に曲り、それが、ここからは見えない入口に通じているが、入口に近づくにしたがって天井からの漏水と落盤がひどく、壁はぬれそぼち、四壁はくずれ埋もって、やっと人が通れるくらいの丸い穴になっている。……花岡が入口の方向に背を向け、前こごみになって光をさえぎりながらともしたライタアの火で、二人の影が正面の壁から天井にまでユラユラと巨大に伸びて動く。そうしながら、彼は首だけをめぐらして、入口の方向をすかして見ている)

村子 ……(シガレットに火をつけ、長く煙を吐きながら、あたりを見まわす)へえ、こんなところ?……(その煙が白の炎のように天井に昇る。同時に花岡が、ピシッと音をさせてライタアを消す。あたりは再び暗くなる。……長く書いたが、二人の人間と穴の中が照らし出されたのは、ホンのタバコを吸いつける七八秒のフラッシュに近い間のことである。もっとも今度は村子の持ったシガレットの先の赤い火があるので、まったくの暗黒ではない)

村子 どんなところかと思ったら、ただの横穴を、すこしデカクしただけじゃないの。