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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

ねえか、村子! こっちまで頭がヘンにならあ!……(身じろぎをしたらしく、ガンドウの光がグラリとゆれる。ガンドウのすぐうしろの暗い地面に寝ているが、姿は見えない。村子は二回目を終って、自然に歌いやめ、無心に立っている。……見えるのは村子の姿だけで、聞えて来るのは花岡の声)――しかし、無理はねえ。……望みがありゃこそ――ダメだ。……道はない。ヘヘ! だからさ――食うものは……ないんだ、もう。チーズも食っちまった。ビスケットもおしまいだ。ウィスキイが――まだすこしあったな? なあおい。村子! 飲むか、お前? あいでも、麦からしぼった汁だぞ、飲むか? (村子は、なんの表情も動かさぬ)……いいや、まあ。なあに、まだまだ――なあ、おい、佐山――君?……どうしたんだ、? おい君? なぜ、だまっているんだ? そうだろう? どうだい? (左の方の暗やみに向かっていうが、そこからはシーンとして、なんの返辞もない)……なぜ返辞をしないんだ? まいっちまったのか、君あ? なんとかいったらどうだ?……(返辞はない)応答なし。フフ! ダラシがねえといっても、ヘッ、インテリなんて、ひとったまりもねえね。