轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

えんしょ

艶書

山本 周五郎

「小説倶楽部」桃園書房、1954(昭和29)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,027 字 · 50 页

青空文庫

「私はあなたが好きだった、好きというだけでなく、愛していたんです」と出三郎がささやくように云った、「あんまり身近だったし長いこと親しみすぎていたので、愛していることが自分にわからなかった、そしてあなたが笠井へゆくと定ったとき、はじめてそれがわかったんです」

「いまになって」七重が苦痛の呻吟のように云った、「いまになってそんなことをうかがうなんて、あんまり悲しゅうございますわ」

「いや、今だから云えるんです」七重さん、と呼びかけて、出三郎は静かに彼女のほうへ膝を寄せた。

「あの恋文があなたからだとわかっても、私は部屋住みの身でどうしようもなかった、しかし今はうちあけることができる、あなたを愛していると、今ならうちあけることができるんです」

「七重が出戻りの、こんなおばあさんになってからですの」

「あなたは少しも変わってはいない、八年まえの今夜と同じ七重さんです」と彼はささやいた、「笠井ではなにも貴女を変えることはできなかった、あなたは昔のままのあなただ、嘘だと思ったら自分をよく見直してごらんなさい、それから鏡をよく見るんです、本当に好きあった同士でなければ、いっしょに暮らしても人間は変わらないものなんですよ」