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わかきひのせっつのかみ
若き日の摂津守
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 页
おたきは眼をさましていて、襖の閉る音を聞き、起きあがってそっちを見た。おたきの起きあがるけはいで、光辰も眼をさました。
「時刻か」と光辰が訊いた。
おたきは身ぶりで制止し、そっと立ちあがって襖際へゆくと、そこに置いてある書類を取って戻った。
「いまこれを」とおたきは囁いた、「宿直の間から入れた者がございます」
光辰は起き直った。受取った書類をざっとめくってみ、「寝ておいで」と云った。おたきは自分の褥へはいり、光辰は立ちあがって、雪洞をひきよせて坐った。
それは光辰の祖父で、陶樹院といわれる五代光昭から今日までの、重臣たちの私曲を記したものであった。藩主を敬して遠ざけたうえ、世襲の重臣たちが交代で政治を支配し、年々一万石以上に当る横領を続けて来た。その例を詳しく列記してあるが、「お止め場」も一例として挙げてあった。鴨は猟ごとに二万羽ちかく捕れる、少ない年でも一万羽を下らないし、名物として知られているため、高い値段で捌くことができた。それは古くから、湖畔の住民たちの生計を支えるものであったが、五年まえにお止め場の指定をして、一部の住民を立退かせて郡奉行の支配に移し、捕れた鴨の大部分を「御勝手入」