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わかきひのせっつのかみ

若き日の摂津守

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 页

青空文庫

として売るようになった。お止め場の指定はむろん藩主の猟場という名目であるし、売った代銀も藩主の内帑に入れるという名目だが、他の多くの例と同様、実際には重臣たちが分け取りをしているのである。賀名川の鮎の「お止め場」も同じことであるし、どちらも、立退きを命ぜられた住民たちは窮乏している。

――かれらがいかに窮乏しているかは、御自身でごらんになったとおりである。

そういう注も加えてあった。

また、これらの事は代々の側用人である浅利、栗栖の両家が主動者で、他の重臣たちは利のために付和しているにすぎない。したがって、両側用人を押えれば、禍根を絶つことは困難ではないだろう、と書いてあった。――光辰は読み終ってから、かなり長いこと黙って、なにか考えていた。彼には考えなければならない多くの問題があったのだ。

光辰はおたきのほうへ振向いた。

「起きているか」

「はい」と答えておたきは起き直った。

「話すことがある」と光辰は囁いた、「宿直のようすをみてくれ」

おたきはそっと立ちあがった。そして宿直の間のようすを入念にうかがい、戻って来て光辰の脇に坐りながら、みな眠っているようだと答えた。