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わかきひのせっつのかみ
若き日の摂津守
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 页
「だめだな」と浜岡図書が云った、「こちらで選ぶよりしかたがあるまい」
「そう致しましょう」と重太夫が云った、「このみちだけは白痴でも人並、ということを申しますが、どうやらおだれどのはそのほうも人並ではないようです」
永井民部がなにか囁き、光辰は袖でゆっくりと口のまわりを拭いた。
「民部、――」光辰が振返って訊いた、「おだれどのとは、誰だ」
「お口が過ぎます」と重太夫が云った、「静かにあそばせ」
光辰はしょんぼりと沈黙した。
その夜、浜岡図書の屋敷で重臣たちが寄合い、側室の選考をした。それは微妙な会議であった。側室にあがった者が世子を生めば、その親は大なり小なり勢力を得ることができる。けれどもまた、しかるべき家柄の者が、すすんで自分の娘を側室にあげるということはない。たとえ相手が藩主であっても、側室はやはり側室だからだ。――重臣たちはいろいろと候補者をあげたのち、吉田屋作兵衛の娘がよかろう、ということにきまった。吉田屋は藩の御用商人で、息子が二人に娘が三人いた。商人の娘なら、たとえ世子を生んだとしても、親が藩政の邪魔になるようなおそれはない。そこでその翌日、次席家老が吉田屋作兵衛を呼んで、その旨を話した。