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あらほうし
荒法師
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 页
明真、明真はいないか……」小坊主の名を呼びつづけたが、燃えあがると、すさまじい呻きのほかには、もう人の声さえ聞えなかった。かれは扉から身を離した、そして縛られたままの全身を、力かぎり扉へ叩きつけた、三度、五たび、けれど扉はびくともしなかった、不飲不食のからだはそれだけでも精根が尽き、かれははげしく喘いだ、いつの間にかあたりはひじょうに熱くなり、巻きこんでくる煙が眼口を塞ぐように思える、燃えているのは本堂であろう、巨大な鼎でも沸騰するような、ごうごうという※(「陷のつくり+炎」、第3水準1-87-64)の音が経蔵を押し包んだ。……もうすぐ此処も火になる、このままいれば焼け死ぬだろう、そのことがはっきりわかると俊恵はつきあげるように忿怒を感じた、死を怖れるのではない、寺を焼かれることが口惜しいのでもない、なんとも説明しようのない、そして自分でも理由のわからぬ烈しい忿りが、むらむらと肚の底からつきあげてきたのだ、それはかれの血の叫びであった、かれの全身にながれている郷士の血が、仏徒としてのかれの存在をひき裂いて出たのだ、――くそっ、ここで死ねるか、俊恵は再び身を起した、そのときである、裏門のほうからばたばたと走って来る