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あしはみていた

葦は見ていた

山本 周五郎

「週刊朝日」1947(昭和22)年6月22日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 页

青空文庫

どうやら箱でも埋まっているらしい、――彼は竿で土を掘ってみた、するとはたして文箱のような物が出て来た。

「たしかに文箱だ」と頼母は呟いた、「こんな処にどうしてこんな物を埋めたのか」

箱には紐が結んであった。腐ってぼろぼろになっているため、触るとすぐに千切れたが、箱を結んだ紐だということは、金具があるのですぐにわかった。箱もすっかり腐朽しているけれども、ところ斑に漆や蒔絵の残っているのが見えた。

風が来て、さっと葦がそよぎ渡った。

頼母は蓋をあけてみた。中に手紙が入っていた。彼はそれを取出して、丁寧にひろげていった。ずいぶん古いらしい、紙は茶色になって、糊のために貼り付いている。巻きほぐすにしたがって、貼り付いた部分が剥げたりまた裂けたりした。そのうえ書いてある仮名文字も(それはあまり上手でない女の筆跡だったが)水のため滲んでいるので、判断できない部分が多かったが、ひろいひろい読んでゆくと、左のような意味のことが書いてあった。

――けいさま、あたし死んでゆきます。

書きだしにはそうあった。

――あたしが死ぬ気になったのは、今夜のお二人の話を聞いたからです。