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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

――」

警戒総指揮官の正木署長が、向うからやって来た。彼も頤紐をかけ、足には靴下を脱いで、その代りに古足袋を履いていた。それは捕物の際、畳の上で滑らないためらしかった。

「おお正木君か。――君、蠅男というのは何十人ぐらいで、隊をなしてくるのかネ」

「隊をなして? ――ハッハッハッ。検事さんのお口には敵いまへん。ともかくも屋内のどこからどこまで、私のとこで完全に指揮がとれるようになっとります」

「ウム、完全完全の看板流行だわい」

「え、何でございます」

「いや、革の袋からも水が漏るというてネ、油断はできないよ。――主人公の居るところは何処かネ」

「ああ、それはこちらだす。どうぞ、こちらへ――」

正木署長は、検事を廊下づたいに玉屋総一郎の書斎の前に連れていった。そこの扉の前には、鬼を欺くような強力の警官が三人も立っていた。

検事は扉の方によって、ハンドルを握って廻してみた。

「ああ、あきまへん」と警官の一人がいった。「御主人が中に入って、自分で鍵をかけていてだんネ」

「中から鍵を――すると警官も中へは入れないのかネ」

「警官まで、蠅男の一味やないか思うとるようですなア」