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けつえきがたさつじんじけん
血液型殺人事件
甲賀 三郎
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年6、7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,256 字 · 71 页
刑事はそのモダンボーイのような服装とはうって変った、鋭い眼でジロリと私を見て、
「署でゆっくりお話しますから、兎に角お出下さい」
そこで私はそこそこに仕度をして、半ば夢心地で、S署に連れて行かれたのだった。
私は暫く待たされた後、調室に呼ばれた。頭髪を短く刈った、肩の角張ったいかにも警察官らしい人が、粗末な机の向うに座っていた。別に誰とも名乗らなかったが、話のうちに、それが署長であることが分った。
「あなたは昨夜毛沼博士を自宅まで送ったそうですね」
署長の質問も先刻刑事のいった通りの言葉で始まった。
「はア」
「何時頃でしたか」
「十時過ぎだったと思います」
と、この時に博士邸の寝室に置いてあった時計を思い出したので、
「そうでした、寝室を出る時に、確か十時三十五分でした」
「そうすると、会場を出たのは」
「円タクで十分位の距離ですから、十時二十五分頃に出た事になります」
「どういう会合だったのですか」
「医科の学生で、M高出身の者の懇親会でした」
「何名位集まりました?」
「学生は十四五名でした。教授が毛沼博士と笠神博士の二人、他に助教授が一人、助手が一人、M高出身がいるのですけれども、差支えで欠席でした」