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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
「髪が伸びているからでございますよ。この間から催促していますが何だ彼だと申してナカナカ参りませんのよ」
とお母さんは序をもって僕の不精を訴えた。
「行って来ますよ。今日は日曜ですから」
と僕は今はこれまでなりと覚悟した。
「朝の中は込まないから早く行って来ると宜い。貉の子のようだよ」
とお父さんが言った時、
「フフフ」
と郁子が笑った。敏子が食卓の下から膝を小突いたのである。この二人は長兄の形勢が悪いと諜し合せて嬉しがる。好くない癖だ。
「貉の妹やい」
と僕は囁いてやった。
「然う然う。この間彼方の新聞に床屋で卒倒した人のことが書いてあったよ。当然待たされる積りで入って行ったら、椅子が悉皆空いていたので、フラフラッとしたんだね。如何にもありそうなことさ」
とお父さんは今日は朝機嫌が好い。日曜で一日休めるからだ。
「まさか」
とお母さんは本気にしない。
「もう一人電話口で気絶した男がある。チリンチリン、何処そこの何千何百番と言うか言わないに交換手が間違いなくその番号へ接いでくれたものだから、吃驚したんだね。ハッと思ったまでは覚えていると後から言っている。これもありそうな話さ」