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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

厄年

あれがこの頃流行でしょう?」

「大流行です。余程面白いものと見えますな。男爵家なぞはお花見から麻雀へ宗旨換えをなさいました」

と杉山さんは何かというと男爵家だ。

「支那人の発明としては碁に次いで面白い勝負事です。支那では、上下を通じて昔からやっています。日清日露の戦争以来日本人は随分彼方へ入り込みましたが、麻雀をやったというものは聞きません。下等なものと見括っていたのです。然るに一度英米に流行り出すと、何うです、猫も杓子も麻雀でしょう? 不見識な話じゃありませんか? 隣国の娯楽を直接輸入する鑑識力がない。英米の折紙つきで初めて採用する。何でもこの調子ですからね」

とお祖父さんのお談義はナカナカ長くて謡曲の稽古は容易に始まらない。独逸を打ち負かした主力は英米である。

厄年

或日学校の帰途、例によって電車の中で観察修行を心掛けていると、真正面の席に腰を下した二人連れの洋服が早速話し始めた。

「何を言っていやがると思ったが、四十の声を聞くと矢っ張り違う。無理が利かない。身体が大儀になったね」

と訴えたのは大男だった。

「未だそんなこともないでしょう」

と応じた相手は少し若かった。